株式会社防長経済新報社

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 2019年1月24日

  • 地域経済

 平成30年度県内倒産企業集計 (株)防長経済リサーチ本社

          小規模倒産及び個人事業体の倒産が目立つ
        単月度倒産10件以下が平成27年5月度から継続

 

 (株)防長経済リサーチ本社情報部が集計した「平成30年(平成30年1月~同30年12月)に1千万円以上の負債を抱え事実上倒産した山口県内の企業」は77件、負債総額は88億9,260万円だった。前年同29年(件数47件、負債総額50億5,200万円)との比較では、件数で30件、負債総額も38億4,060万円の増加となった。過去10年間で比較すると件数は5番目(件数最高は同21年の102件、最少は同27年の42件)、負債総額は8番目(負債総額最高は同21年の411億9,900万円)。平成年代に入ってからの比較では、件数は6番目の少なさ(最高は同13年の206件、最少は同27年の42件)、負債総額は4番目の少なさ(負債総額最高は同15年の1,122億9,180万円、最少は同29年の50億5,200万円)であった。
 業種別では卸・小売・飲食が最多の29件。続いて建設関連業が24件、サービス業が13件、製造業と運輸・通信業が4件ずつ、不動産業が2件、農林・水産業が1件と続いた。卸・小売・飲食が業種別トップとなるのはここ20年で5回目(その他の年は全て建設関連業がトップ)。地区別では下関地区が最多の23件、次いで宇部・小野田地区が18件、山口・防府地区が12件、周南地区が10件、岩柳地区と山陰地区が7件ずつと続いた。下関・宇部・小野田地区が全体の53 %を占め、当該地区の人口比率37%と比べ突出した数字となった。原因別では売上不振64件、過小資本10件、採算割2件、放漫経営が1件であった。破産内容内訳は、破産開始決定が57件、法的処理着手が17件(後、破産手続開始)、特別清算1件、銀行取引停止1件、個人再生1件で、法的着手のうち1件は平成26年12月以来の法人による民事再生申請準備であった。個人事業体の倒産が24件発生し、全体の31%を占めたが、30%超えはここ20年で初であった。
 倒産企業のうち負債10億円以上の大型倒産は1件、負債5億~10億円未満の中規模倒産が4件で、負債5,000万円未満の小規模倒産が43件と全体の56 %を占めた。
 倒産企業のパートを含む従業員数は348名(前年178名)であった。
<今後の動向と見通し>
 ここ数年続いていた企業倒産の小康状態は一昨年後半あたりで底を打ち、平成30年は倒産件数が前年比64%増加、負債総額は同76%の増加となった。倒産を抑える大きな要因の一つであった金融機関による中小・零細企業に対する手厚い支援方針の大枠には変化はないものの、財務内容の弱い企業や収益性の低い企業に対する金融機関の見方はやや厳しくなった印象があり、これまで抑制されてきた倒産の発生ペースが増してきているように思われる。政府による景気刺激策の奏功もあり、大都市・大手企業の経済活動は概ね活発であると言えるが、地方に位置する山口県内の今年の企業倒産のうち、小売や飲食、サービスといった主に個人を対象とする倒産が多く、個人消費は企業の景況感とは裏腹に弱い傾向を示していることが気がかりである。人手不足を背景とした人件費や外注コスト、資材・燃料他の経営コスト上昇で、低収益に陥り財務内容が悪化した企業も見受けられる。後継者問題など、県内の中小・零細企業を取り巻く経営環境は大企業のそれとは異なり厳しい状況が続くと思われる。

 

 

 

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