福田良彦岩国市長と藤本泰也市議会議長、岩国商工会議所の安本政人会頭は、5月23日、防衛省を訪問し、原田憲治防衛副大臣と岩国市出身の山村浩・海上幕僚長に対し、昨年退役したUS-A救難飛行艇を中核とする海上自衛隊広報館「飛行艇ミュージアム(仮)」の整備に関する要望活動を行った。
岩国市は米軍再編に伴う空母艦載機部隊の岩国基地移駐に合わせ、地域振興策の一環として岩国基地を活用した航空博物館建設を国への要望事項に盛り込み提出している。市議会や岩国商工会議所も岩国基地を活用した地域振興策、観光振興策として航空博物館建設に向けて基本構想を立案して提出、早期実現に向け市の基本計画を策定するよう求めている。提出書に基づき、市は政策企画部を中心に市の基本構想の立案に取りかかり、今年3月世界で唯一、荒波でも運用可能で海上自衛隊岩国航空基地だけに配備されている「救難飛行艇」を核とし、飛行艇の歴史や海上自衛隊活動の周知、幅広い市民交流の促進などを目的とする海上自衛隊の広報館的要素を持った「飛行艇ミュージアム」とする基本構想をまとめ、国による整備を求めることを決めた。
同日、福田市長らは岩国基地に配備されている救難飛行艇が「世界唯一のもので洋上救難や離島からの急患搬送で活躍し、その技術と能力は世界一である」と評価していることを示した。
また岩国基地内には旧海軍時代からの貴重な資料を保存している「岩国航空基地史料館」があり、自衛隊員の教育施設として活用される一方、一般への広報の場となっているが、米軍との供用基地のため一般市民や観光客が安易に見学することはできない。地元側としてその広報効果が「限定的である」ことも指摘し、航空博物館の建設は、「自衛隊員や米軍関係者と市民との交流を促進し、岩国航空基地への理解と協力の促進に繋がるだけでなく、観光振興など地域活性化にも大きく寄与する」と強調した。
また、昨年12月に閣議決定された中期防衛力整備計画においても「地方公共団体や地元住民に対して、平素から防衛省・自衛隊の政策や活動に関する積極的な広報などを行う」と示されていることも示しながら、海上自衛隊岩国広報館「飛行艇ミュージアム」の必要性を強く求めた。
要望に対し、原田防衛副大臣は「国の財政状況が厳しい中、現時点で防衛省・自衛隊として新たな広報施設を整備することは容易ではない」と厳しい意見を述べたが、「要望の内容を踏まえ、我々として何ができるかをしっかりと考えていきたい」と要望の趣旨に理解を示した。